写真を本に閉じ込めて。人は愛情を伝えることを、さぼってしまうのは何故だろう。父親が定年退職をむかえた話

f:id:nontsu:20170420232339j:plain

この春、父親が定年退職しました。

わたしの父親は、無口で感情をおもてに出すのが苦手なタイプ。わたしがたまに実家に戻ると、いつだか「美味しい」と言ったものをずーっと覚えていてくれて、ていねいに作って差し出してくれる。そんなひとです。

料理には愛情がたっぷりこもっているのに、いざ一緒にごはんを食べる!となると目も合せようとしない、不器用で照れ屋なひとです。

そんな父親も、60歳。

ふと、ちいさくなった父親の背中と、白髪がたくさん混じった頭に気がついたとき

初めて” わたし、いままでお父さんに「ありがとう」って伝えたことあったかな ”とぼんやり思いました。

 

 

愛情を伝えなくなったのは、いつからだろう

f:id:nontsu:20170421012210j:plain

1人娘のわたしは、ちいさい頃からそれはそれは甘やかされて生きてきました。

やさしくしてもらうことも当たり前だったし、愛情をもらうことも当たり前。今思えば、「欲しいものが手に入らないと、いつまでも泣きわめき続ける」ような、ほんとうにわがままし放題の、とんでもない子供だった記憶があります。

ダメダメな子でしたが、わたしに愛情を注いでくれる親が大好きで、毎日のように「お父さんと結婚する!」だとか「ずっと一緒にいる!」と、甘えていました。

 

 

そんな親と「距離」が出来はじめてしまったのは、いつからだったんだろう。

「大好き」を言葉にするのが恥ずかしくなって、甘えなくなってしまった境目は、どこからだろう。

そして同時に、伝えなくても伝わるだろう。知っているだろう と、自意識過剰になりはじめたのは、いつのころからだったんだろう。

恋愛だって、仕事だって、思いを言葉にしなくちゃ伝わらないのと同じで

家族に「大好き」や「ありがとう」を言わなければ伝わらないのは当たり前で。

そんなこと、少し考えればわかるのに。

距離が近ければ近いほど、安心して、愛情を伝えることをさぼってしまうのだろう。

 

ものはたくさんあげてきたけれど  

f:id:nontsu:20160425224627j:plain

社会人になって約7年。いままで「誕生日」も「父の日」も、いろんなものをあげてきました。マッサージ機やら、図書券、そして旅行券。お酒をプレゼントしてみたことも。プレゼントを選ぶとき、「お父さんこれ好きかな」とか「これあげたら喜ぶかな」と、いろいろ考えながらあげていたけれど、お父さんとの距離はなぜか、開くばかりで。

 

f:id:nontsu:20170808011018j:plain

「なんだか照れくさい」を理由に、ものよりも大事なものをわたしは何年もお父さんに伝えていない。

「いつでも伝えられるだろう」と思い続けていたら、いつの間にか27歳になってしまったし、父親も、定年退職する歳になっていました。

ちゃんと伝えられるうちに、伝えよう。

 

父親の丸い背中を見て、そう思ったのです。

 

とはいえ、無口で照れ屋な父親の子です。わたしも自分の気持ちを口にするのが、すごく苦手。頭で分かっていても素直に面と向かって「大好きだよ」なんて恥ずかくて、言えません。

 どうしようか悩んでいたところ、たまたま昔お世話になっていたMyBookさんから

久々に、本つくってみない?」とご連絡をいただきました。

 

思い出の写真を本に。高画質フォトブック「MYBOOK」

 

http://www.mybook.co.jp/

 

My Bookは、4年前ごろからたびたびお世話になっているサービスで、Web上で写真を選んで、世界にひとつだけの本を作ることができるというもの。

むかし趣味で写真展を開催していたときに、ムック本をつくるのによくお世話になっていて、「最近どう?良かったらまた作ってよ!」と、担当の方が連絡をくれたのです。

 

そうだ。写真がメインで、文章はおまけにしてしまおう。

そしてしれっと送って「ねぇあれ、読んだ?」なんて聞いてみればいい。

そう思い、担当の方に話してみたところ「ぜひつくろう!」と、賛同していただき、「お父さんにおくる本」をつくることになりました。

 

f:id:nontsu:20160427172214p:plain

 

My Bookは、写真の横に、テキストが入ります。長文もなんなくはいるため、今までの想いを綴ってみたのですが・・・

何度書き直しても納得できず、それだけで1週間くらい費やしてしまいました。

それでも手紙はダイレクトすぎて恥ずかしいけど、デジタルの文字ならなんとなくワンクッションはいる気がして、すこし、緊張が和らぎます。

 

注文してから約1週間。手元に、真四角の本が届きました。

 

 

表紙には、ゆいいつカメラの中から見つけた父親と母親の写真。 何度も何度も悩んだタイトルはシンプルに「Dear My Father」(笑)小学生でも思いつきそうな、自分でもおどろくほどシンプルなタイトルになってしまったのです。

 

 

1ページ目には、父親の好きなところを

f:id:nontsu:20160427115247j:plain

2ページ目には、尊敬しているところを

 

 

そして最後のページには、これからのわたしのことと、父親への想いを書き留めてみました。

 

手書きじゃない、印刷の文字からはなんとなく「大好きだよ」が伝わりにくくって
それがなんともわたしらしいなと思いながら、そっと父親に郵送しました。
ちゃんと届いたかな。読んだかな。恥ずかしくって、何も言ってこないかな。

そんなことを思いながらソワソワしていると、後日父親からは、こんなメッセージが送られてきました。

 

f:id:nontsu:20160429190626j:plain


解読がむずしかったのですが、どうやら飼い猫の名前がまちがっていた(らしい)です(笑)

とりあえず、最近ケータイを持ちはじめて、メールに慣れていない父親ががんばって打ってくれたことがめちゃくちゃ嬉しくて。くすぐったいような、恥ずかしいような、何だか次に顔を会わせるのが恥ずかしいような。そんな気持ちになりました。

(27歳にもなって、ちゃんと真正面きって向き合えない子でごめんなさい)

 
お父さん、定年退職おめでとう。そしていつもありがとう。これからも、大好きです。


そして今回ご協力してくださったMy Bookさん、ありがとうございました!

今回制作したサービス:My Book▼

 

http://www.mybook.co.jp/